あの屋根!この屋根!

たかまつミライエ 最先端技術と匠の技で完全球体の防水に挑む

(2/4) 一般社団法人 日本金属屋根協会・広報委員会

半径8 メートルの球体というのはとても小さいです。

Q1:建築のポイントは球体のようですが?

(株)久米設計様から球体の話があったとき、その際対応した当社の大阪支店としては、それが可能になるのはシーム溶接工法しかありませんと答えました。素材としてチタンが選ばれたのは、色の問題と耐久性です。チタンには独特の色がありますが、今回採用されたのはアルミナブラスト仕上げというものです。アルミナの粒子をぶつけて表面を粗くして、反射を鈍くするような加工仕上げです。その結果、特殊な色として見えます。艶消しの風合いと独特な色が実現します。太陽が当たると強く反射しますが、曇りだと目立たない落ち着いた雰囲気を醸しだします。この、濃いグレーの色と風合いは施主である高松市の要望でもあったようです。

半径8 メートルの球体というのはとても小さい

カーテンウォール越しに外の球体と内部の球体が一体の球として繋って見えるよう設計されており、外周部分380㎡、内部の天井部分が138㎡です。シーム溶接工法を施工するには、半径8メートルの球体というのはとても小さいです。多角形として作ると、0.4ミリの薄い板ですから、下地の凹凸がそのまま出てしまう。外装部分(球体上部)は球状のPC版で作ってあり、内装部分は鉄骨の母屋です。

内装部分はチタン板材の割り付けに合わせて、縦のはぜの部分に鉄骨の縦母屋が入るように設定しました。これに下地ボードを張り、吊子を取り付け、屋根を溶接で一体にしていく、というのが今回の工事の手順です。特殊な部分が多いため、設計協力図の段階から、納まりを含めて技術協力して進めてきました。

Q2:工事の難しさ、苦労した点は?

球体の赤道部分にジョイントラインを入れたくないという設計者の強い意向がありました。赤道部分で繋がないとなると、紙風船のパーツのように3 次元で一体成型加工できる機械が必要です。我々は「風船加工」と言って働き幅を小大小の木の葉状のパーツに3次元加工できる目途が立っていた制作途中の装置をこの工事で使うことにしました。

運搬可能な長さは18m。これ以上のものは制作出来たとしても、実際のデリバリーを考えれば、現実的ではありません。今回は、赤道部分の幅を420mmになる様に球を120 分割しました。

従来の工法でも板材から台形を切る、曲線を近似する、アールを切り出す、といった作業の機械化は行っていましたが、アナログ作業であり精度の限界を現場で職人さんの技能で補っていました。

それをデジタル化して、コンピュータ制御によって、より複雑な形状により正確に機械加工できることを目指し、システムを新たに開発しました。そのタイミングと今回の案件がちょうど一致したのです。もしこの球体がもっと大きなもので半球状であったら、従来の技術で曲線近似・多角近似の方法も可能なのですが、何しろ小さい。この大きさでは、実際の球体と板材との誤差があり、溶接したときの歪や、部位によって引っ張りの程度が微妙に異なるため、球面がうまく作れません。

今回、大小の木の葉状のパーツ、つまり球体を分割したパーツを作る技術を新しく開発できたので対応できた。溶接機も特殊なものを利用しています。この2点が成功の最大の要因です。

デジタル化して、コンピュータ制御によって、より複雑な形状により正確に機械加工できることを目指し、システムを新たに開発

3次元成型機:従来はまず面材を必要な形にスリット、次に再度成型機にセットしてはぜを立てる2工程必要だったのですが、3次元成型機なら同時にできます。球体であれば、アールや分割数、はぜの位置を入力すれば、自動的に板材を切り出して成型までしてくれます。球体では板材を紙風船型に切り出しますが、逆風船型にもバナナ型にもスリットッできます。ですから、どんなにうねった屋根、自由曲線のような屋根でも、その曲線を数値化さえできれば、3次元成型機によって一度で成型できます。
新しい溶接機:チタン溶接は溶接条件が非常に狭いので、専用の溶接機を開発しています。チタンはシーム溶接で熱を加えすぎると、その部分が脆くなってしまうので十分な熱管理を行い溶接していきます。

これまで鉄骨下地への施工に関して、さまざまのことを模索してきました。北極と南極部には2段目、3段目にジョイント部が発生するため、割り付け通りに下地がないと板金の施工ができないため、われわれが作った施工図面通りに下地を作ってもらいました。

3次元成型機

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