(1/4) 一般社団法人 日本金属屋根協会・広報委員会
「こども未来館、夢みらい図書館、平和記念館、男女共同参画センター」の4つの施設を一体的に整備したもので「子どもを中心に幅広い世代が交流できる施設」という市が求めた基本理念に久米設計大阪支店チームの案がプロポーザル方式で選定された。
― 建築概要 ―
7階建ての建物は4つの機能をフロアーごとにまとめると同時に、吹き抜け空間と階段を介して上下につながり、利用者は施設内を自由に回遊し、活発な交流が生まれる。設計者は「外観自体がアート作品として街に活気を与えるようにデザインした」という。上下につながるのは内部のフロアーだけではない。建物上部に配された球体は空につながり、「空との一体感」をも表現している。だからこの建物の「目玉」は文字通り半径8メートルの球体である。球体は厚さ0.4ミリのチタンで覆われている。
球体の内部は、旧市民文化センターにあって人気を集めていたプラネタリウムである。球体は5階の北東の角に配置される。球体の底部は建物内部に沈み込んで4階の天井から顔を出す。4階の科学・昆虫標本展示室の天井は球体のお尻という訳だ。
施設のシンボルである球体に対する設計者のこだわりは尋常ではない。真球であること、歪がないこと、赤道部分に継ぎ目がないこと、外装材は近隣への光害対策を考慮して、反射が少ないことなど。さらに施主である高松市からは、耐食・耐久性、耐汚染性、メンテナンスフリーといった要望も。加えて色調・質感といった設計者の意向もあり、これらの条件をクリアできる工法はチタンによるシーム溶接工法に絞り込まれっていった。
しかしこれまで金属板による球体の制作は、東京・台場のフジテレビ本社のようなオブジェであったり、せいぜい半球のドーム屋根程度である。今回のように屋根として、壁としてすなわち建物外皮として完全な防水機能を備えつつ、表層にも工芸品に近い精度を要求されることはなかった。
不可能とも思える条件だったが、タイミングよく三晃金属工業が、3次元成型機の制作を進めており、それがほぼ完成の段階に来ていた。ただし開発部門が当初考えていたのは15mアールの球体を想定したシステムである。今回の現場は8mアールと、かなり小さい。小さいほど曲線近似が難しく、歪が出やすくなる。三晃金属工業としても完全な球体施工は初めての経験であり、一部実物大のモックアップを作り、各工程を検証しながら、システムの修正と溶接機の改良を同時進行で行った。
今回は2か月半にわたって現場を往復して品質施工管理を行った、三晃金属工業技術本部技術部ステンレス防水技術課課長・柿澤隆之さん(写真)に、工事の苦労と勘所を聞いた。
三晃金属工業技術本部技術部ステンレス防水技術課課長・柿澤隆之さん