一般社団法人 日本金属屋根協会 技術委員会
『風と金属屋根』は、金属屋根の風に対する安全性向上を目的として1998年9月に初版を発行し、その後、2000年の建築基準法の改正に合わせて2001年10月に第2版を以下の内容で発行しました。
本書の発行が、その後に当協会が独立行政法人建築研究所(当時) の監修を受けて、一般社団法人日本鋼構造協会と共同で発行した『鋼板製屋根構法標準SSR2007』、『鋼板製外壁構法標準 SSW2011』、『鋼板製屋根・外壁の設計・施工・保全の手引きMSRW2014』の制作につながり、金属製屋根・外壁の構造安全性はもとより、防耐 火・耐久性など多岐にわたる技術資料を整備することができました。また、これら3 冊の内容を分かりやすく取りまとめた『初めて学ぶ・もう一度学ぶ金属の屋根と外壁 LLM2017』を金属屋根・外壁に関する基礎資料として 出版しております。
昨今、地球環境の温暖化による海水温の上昇に伴い、2000年以降台風の大型化が顕著となり、とりわけ2018年の台風21号、2019年の台風15号では50m/sを超える瞬間最大風速を各所で記録したほか、降雨についても最大降雨量の更新が多発しています。気象環境が苛烈さを募らせる中で、人びとの生活と安全を守る屋根・外壁の役割は、これまでにも増して大切になってきています。
そこで、当技術委員会では屋根・外壁の安全性の基本に立ち返り、金属製屋根・外壁の性能の中で最も重要と言える耐風性能について改めて考察を加えることとし、『風と金属屋根』の内容を刷新した第3版を発行することといたしました。
本文の中で繰り返し述べているように、強風による被害を防ぐには、風荷重の適切な算定とその荷重に耐えうる屋根・外壁を作り上げる基礎となる強度確認をしっかり行なうことと、屋根の棟、けらば、軒先などの負圧の大きくかかる部位において入念な「納め」を実施することです。本書が関係する皆さまの、風・雨に対する金属製屋根・外壁の安全性をより高めるきっかけとなれば幸いです。
併せて、公共工事を中心に木材利用促進の観点から木質系建築物の計画が増加しており、軽量かつ短工期で施工が可能な折板屋根の採用を促す目的で、2019年、国土交通省国土技術政策総合研究所がとりまとめた「集成材架構に適用する折板ぶき屋根の設計法(案)」並びに協会が2018年実施した「集成材梁+タイトフレーム強度試験」の報告書を収録しました。
風の発生、我が国の強風、強風の構造について説明しています。
風圧と風圧係数、風力と風力係数、屋根ふき材に働く風圧と風力などについてふれています。
平成12年建設省告示第1454号並びに第1458号で示された外装材の規定、構造骨組み用荷重の規定、全国の基準風速などを解説しています。
計算ソフト『屋根を調べる』を使った風荷重の算出と屋根・外壁の強度の確認方法等を中心に解説しています。その他、データ使用上の注意事項、ピーク風力係数のグラフなども掲載。
被害の要因の要因と瓦棒ぶき屋根、立平ぶき屋根、横ぶき屋根、折板屋根、外壁、といの被害例の写真を掲載して
います。
屋根の標準的な納まり、風に対する特別な納まり、その他の補強対策についてふれています。
屋根・壁の防水・排水(雨仕舞)性能の解説、金属屋根・外壁の雨仕舞機能、雨水の浸入に関する風の影響等について解説しています。
また、これからの地球環境と設計降雨量(降水)の設定の考え方をしめしています。
民法の改正を踏まえ金属製屋根・壁の施工保証に対する考え方、保証書発行の注意点について記載しています。
SRW2014の記述に基いて、維持保全の定義、点検及び対策の方法を記載しています。
また、約40年屋外暴露試験体分析結果まとめも掲載。
1.1 建築物の台風被害の軽減に資する基規準の変遷
1.2 風圧力算定に対する考え方
1.3 風荷重関連基準の考え方
2.1 平成30年 台風第21号に伴う強風による建築物等被害現地調査報告
2.2 大阪中心街で60m/s 〜70m/s 台風21号の風速をシミュレーション
2.3 平成25年9月に発生した竜巻による埼玉県越谷市等での建築物被害
3.1 「角波」の送風散水試験 試験結果報告
3.2 鋼板「一文字ぶき」動風圧試験 試験結果報告
3.3 重ね形折板における接合部耐力試験
3.4 外壁材の飛来物耐衝撃性試験
3.5 唐草つかみ込み耐力比較試験
4.1 「集成材梁+タイトフレーム」強度試験報告
4.2 集成材架構に適用する折板ぶき屋根の設計方法(案)