(3/5) ルーフネット 森田喜晴
缶詰の中身。金属の下に茅が見える。
塩澤さんはこういいます。
"トタン"を被せる時は、束を立てて隙間があくので茅屋根は蒸れることがなく、乾燥状態になる。"トタン"を被せたからこそ、茅葺き屋根を成り立たせていた伝統的な農業が行われなくなった後も、これほど多くの茅葺き民家をのこせた。"トタン"で覆われた屋根はまさしく「茅葺きの缶詰」なのです。茅葺き屋根に厳しい時代を乗り切り、未来に託すために。
この意味では缶詰屋根は草葺き屋根の歴史を飲み込んだタイムカプセルと言うことになります。そこで板金・茅葺き屋根関係者に、金属を被せるという行為に対する意見を聞いて見ました。
まず① 屋根が健全なうちに金属を被せるなら、確かに茅はいい状態で残り、材料である茅の状態や葺き方も解る。従って再現もできる。しかし現実には茅が劣化して初めて金属が被る、それも少しずつ、どうしようも無くなった部分から被されることが多い。故に中の茅はボロボロで、タイムカプセルの役割は果たせないのでは。街中に残った茅葺き屋根はこの道筋をたどることが多い。
その② 茅の葺き替えの際、捨て場が無くなくなっている、仕方なく被せ工法を取るのでは。フォルムをのこそうというより、もっとも安価な工法をとった結果では。
その③ 茅を残して金属を被せる場合、単に茅の上に載せるだけでは、ブカブカしてしまう。さらに経年で茅が痩せてくれば、へこんでくる。だから束を立てて下地を作りその上に金属を貼ることになる。作業性を優先して束を高くすれば、屋根面は当初の茅葺きの面より一回り大きくなる、頭デッカチになって、さらに耐風性も問題だ。
さらに④ 現場でハサミを使い、作りこんでゆくのではなく、瓦型にプレスした板金で予めパッケージを作って、それに押し込めていく場合、安く早くできるが、それでは地域独特の屋根の形は残らない、タイムカプセルの役目は果たせないのでは。これらの検証は今後の課題です。
質のいい缶詰の例は美山から園部を経由して篠山への京街道沿いに見られる、という塩沢さんのアドバイスを頂き、再アタックしたのが次の写真です。このあたりは農業の盛んな丹波の米どころで茅葺き民家が良く残り、缶詰屋根も質の高いものが多く面白い、といいます。
以下の写真は「新人缶詰屋根ファン」が見た第一印象です。ご批判を覚悟であえて、書いてみました。
缶詰として良い方では。背景との違和感はない。
立派なお屋敷だけに、色をもう少し抑えた方が。やや頭デッカチか。
これも近くのお屋敷に2棟。右上とほぼ同じフォルムだが、色で印象が異なる。
これも違和感なし。上品とは言えないが、愛されている感じが漂う
金属なりに素敵です。フォルムが整っていえばさほど違和感はない。
曲り屋。やや愛情が・・・。
もはや「色々あって良いなあ」という境地。
悪くないぞ
雨が上がって日が差してきた。濡れた面と、反射面が金属でしか見られない表情を見せる。
雨の中で見るせいかこれはこれで悪くない。
これはやや頭デッカチか。惜しい。
刻々と生活の移り変わりに合わせて変化して、生きている屋根だ。
棟は金属に移行中
棟包みから少し下まで頑張ったが、息絶えたか?放置状態。手前の洒落た土蔵があるだけに惜しい
畑の先に2棟の缶詰。茅葺きに見えるが向こうの家も缶詰屋根だ。