金属の屋根と外壁を知る

基材説明

スチール

鋼材の製造方法には高炉法と電炉法がある。高炉法は高炉で鉄鉱石から銑鉄をつくり、それを鋼にして鋼材を作り出し、電炉法は、鉄スクラップを電気炉で溶かして鋼をつくり鋼材を生産する。めっき鋼板や塗装鋼板は、ほとんどが高炉で生産された鋼材を材料としている。

日常、「鉄」と呼ばれている金属は、ほとんどの場合「鋼」である。この鋼を作り出すことを製鋼と呼び、銑鉄を精錬して鋼に変える工程である。高炉で生産された銑鉄は炭素分をたっぷり(4~5%)含んでいるために、硬くてもろい。これを粘りのある鋼にするには、炭素を徹底的に減らし、またリン、硫黄、珪素などの不純物を減らす必要がある。これが、製鋼の目的である。この鋼から鋼材をつくる最も主要な方法は、上下のロールにはさんで押し伸ばす圧延である。

圧延には素材の鋼片を加熱して押し伸ばす熱間圧延とそこで出来たものを常温でさらに伸ばす冷間圧延とがある。薄板は熱間圧延に続いて冷間圧延を行う場合が多い。冷間圧延は、板厚をさらに薄くするだけでなく、表面を美しく、かつ均一にすることが出来るので、自動車のボディ用、家電用、屋根や外壁のめっき・塗装鋼板は、ほとんどが冷間圧延によってつくられる冷延鋼板である。

ステンレス

ステンレスとはクロム(Cr)を約12%から約32%含む鋼の総称である。ステンレスの耐食性・耐候性は、含有されるCrが酸素と結合して地金の表面に形成される100万分の数㎜という非常に薄い膜(酸化膜)=不動態皮膜を生じることによる。この膜は復元力を持っており、傷口が開いても即座に空気中の酸素と反応し、新しい皮膜を生成して地金を保護する。理論的にはクロムの含有量が多ければ多いほど、この皮膜は強固になる。

したがって、環境などの作用によって不動態皮膜が破壊され、その再生が妨げられるとステンレス鋼も錆が生じることもある。

通常、屋根材にはSUS304(18%クロム-8%ニッケル)、部品・ファスナー類にはSUS410(13%クロム)が使用される。海岸地帯や工場地帯など耐食性を要求される建築物では、モリブデンを添加したSUS316や最近ではSUS304やSUS316で問題となっている塩害や孔食に強いSUS445(22%クロム)などが使われるようになっている。

銅板は桃山、江戸時代より神社仏閣などで使用されるようになり、屋根をはじめとして錺金物など細かな部位でも用いられている。銅は一般的に耐食性がよく、時期を経て発生する青い色の錆(緑青)が好まれている。加工性が非常に良好で、細かな加工が可能である。現在でもその優れた特性によりよく使われている。

銅板は脱酸素の方法によって「りん脱酸銅」、「タフピッチ銅」及び「無酸素銅」の三種類に分けられる。このうち屋根用にはりん脱酸銅が主に使われる。

銅板の質別をJIS規格では、軟質、1/4硬質、1/2硬質、硬質などに分類している。屋根用の銅板としては一般的に1/4硬質、1/2硬質が使用される。また、鬼瓦などでは深絞り性を必要とするので軟質が使用される。

大気や雨水などの自然環境は屋根に葺いた銅板の色調を様々に変化させ関係者の気をもませることがある。一般的に新しい銅板が大気にさらされると酸化が始まり、褐色を帯びて概ね以下のように変化する。銅板の酸化膜は緻密な安定した被膜となり内部を保護する。

緑青

銅屋根は年月を経て自然に緑青が生成するのが理想であるが、緑青の生成する期間や色の具合は、大気の成分や環境によって一定ではなく、その予測も難しい。

このため、あらかじめ銅板の表面に工場で化学処理を施し、はじめから緑青のついた銅板がある。これとは別に表面を硫化処理した黒茶色の銅板もあり、これもやがては緑青が生成する。

アルミニウム合金

アルミニウムは、実用金属材料の中ではマグネシウムに次いで軽量(比重2.7)で、鋼材の約1/3程度であり、合金化や加工条件を選定することにより、鋼材並みの強度を得ることも可能である。

しかしながら、線膨張係数が鋼材の約2倍、剛性(ヤング率)は鋼材の1/3程度であり、構造材の設計に当たっては、熱伸縮とたわみに関する注意が必要である。

熱や電気の伝達性に優れ、光や熱の反射率も高いなどの特徴を有するほか、表面に生成される酸化皮膜の保護作用により、塗装などの表面処理を施さなくても実用上十分な耐食性を有している。

一方、成型加工性は鋼板と比較すると劣り、さらに表面が軟らかく傷つきやすく、ロールとの焼き付きが生じやすいため、成型ロール等の工具表面のメンテナンスが必要であり、特に生地材の場合には適切な潤滑油の使用が求められる。

屋根に用いられるアルミニウムには、マグネシウムやマンガン等の合金元素が添加されており、冷間圧延での加工歪み付与や、焼鈍による応力除去等の工程条件を組み合わせて、強度と成型加工性のバランスが図られている。これらの合金では剛性や屋根環境での耐食性に大きな差はない。

チタニウム

チタニウム(元素記号:Ti)は、一般産業用に使われる純チタンとチタンにアルミニウム、バナジウムなどの元素を加え、航空機のエンジン・機体部品などに使われるチタン合金とに大別される。建材に用いられるのは純チタンで、中でも加工性の良い1種材あるいは2種材が一般的である。

純チタンを屋根や外壁に使用する場合の特性には以下のようなものがある。

  1. 海洋雰囲気も含めて一般環境ではほぼ完璧な耐食性を持っていることに加えて、酸性雨に対しても他の金属よりも優れ、温泉地帯などでも優れた実績を示している。ステンレスの欠点である孔食、粒界腐食、応力腐食割れの心配がない。
  2. 比重は4.5で、同じ体積で比較すると銅の約50%、鉄の約60%と、軽い金属である。
  3. 熱による伸び縮みが小さい。線膨張係数はステンレス鋼の約半分、アルミニウムの約1/3でガラス、レンガ、コンクリート等とほぼ同じ。熱伝導率はSUS304ステンレス鋼とほぼ同じ。
  4. 普通鋼とほぼ同等の強度と硬さを持つ。ヤング率は鉄の約半分と小さく、軟らかくたわみやすいが、スプリングバックが大きいという特徴がある。
  5. 陽極酸化法による発色が可能である。電気抵抗はSUS304とほぼ同等で、他の金属材料に比べて大きい。非磁性体である。

亜鉛合金

亜鉛合金は亜鉛を主成分とし、これに銅・チタンなどが微量含まれたものである。日本で屋根・外壁に使用されている亜鉛合金板には三井金属鉱業の「サビナシルーフ」とドイツ・ラインジンク社の「ラインジンク」があるが、両者の合金の構成は幾分異なる。

亜鉛合金板は表面に形成される不動態皮膜により耐食性を保ち、グレー系の落ち着いた色調に特徴がある。表面の色調は経年変化によって落ち着いていくものであり、また、塗装のような均一的なものでもない。表面の色調は周囲の環境によっても異なる。

ページトップへ戻る