あの屋根!この屋根!

祇園祭大船鉾の銅板屋根 -150年ぶりの復活に板金職も一役-

(1/3) ルーフネット 森田喜晴

2015年平成27年元旦の京都は大荒れだった。抜ける様な青空が10分後には一転雲が空を覆い猛吹雪に。身をすくめていると、いつの間にか治まってまぶしい太陽が顔を出し、また降る。そんな繰り返しで、3日の午前零時には積雪21センチを記録した。京都地方気象台は60年ぶりの積雪20センチ超え、観測史上4番目と発表した。

京都を代表する社寺といえば、建築、仏像、佇まい等々、誰もがそれぞれの思いや、思い入れがあって、初詣客数トップの伏見稲荷が一番とは言えない。しかし大晦日の「おけらまいり」や初詣、節分、祇園祭などで華やかさと「京都らしさを」醸し出す祇園・八坂神社は「観光京都」への貢献度は極めて高い。

さて今年の正月の京都は60年ぶりの大雪で、震えたのだが、昨年の夏は祇園祭で燃えた。
祇園祭はそもそも八坂神社の御霊会(ごりょうえ)なのである。

市役所前を巡行する大船鉾。
先祭と後祭でコースが異なるため、「先祭の巡行では撮れないナイスアングルです」と大船鉾保存会が大喜びしたカットだ。

朝日新聞7月25日の朝刊。

2014年夏の京都はひときわ暑かった。全国的にも猛暑だったし、京都の暑さは昔から有名なのだが、今年は特に四条の鉾町の住民は燃えた。その理由は、150年ぶりに祇園祭に「大船鉾(おおふねほこ)」が復興したからだ。祇園まつりが幕を閉じる7月31日まで、京都の人たちは気候の挨拶なみに、この鉾を話題にした。テレビはもちろんだが新聞は特にヒートアップ。京都新聞はもちろん、朝日、毎日、読売でも、7月に入ると祇園祭特集が続いた。

河原町御池交差点で辻回(つじまわし:割竹を車輪の下に入れ、水を撒いて方向転換)する様子を「150年ときを超え船出」と大見出しで掲載している。大船鉾の屋根に新らしく葺かれた銅板はピカピカで、東京駅を思い出させる。紙面の大きな写真から、まぶしい屋根が目に飛び込んでくるのだが、記事には屋根に関する記述は一切ない。しかし実際は屋根工事も大事な役割をはたしていた。

1864年禁門の変(蛤御門の変)で焼失した大船鉾は150年ぶりに復興され、後祭の巡行で10基の鉾の最後尾を飾った。その様子を大きく報道している。船鉾を除いて、通常鉾の屋根は切妻屋根の板張りなのだが、船鉾や大船鉾は、立派な唐破風までついた銅板葺だ。

見せ場の辻回し

祇園祭に今年から「後の祭」が復活したおかげで山鉾巡航を2度見ることができる。鉾の巡航の最大の見どころは、やはり「辻回し(つじまわし)」だろう。操舵装置を持たない鉾は方向転回の際、車輪の下に割竹を敷き、水を撒き、人力で90度回転させる。これが辻回しで、「大きな重い鉾をスマートに品良く回す」ことが決め手だ。

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