屋根改修工事の手引き [第2版]

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金属の屋根と外壁LLM2017

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鋼板製屋根・外壁の設計・施工・保全の手引き

MSRW2014

屋根改修工事の手引き [第2版]

一般社団法人 日本金属屋根協会 技術委員会

当協会の技術委員会は、内容を刷新して
『屋根改修工事の手引き-第2版』を発行しました。

A4版240ページ
7,500円(会員:6,000円)
税・送料別途

はじめに

屋根と外壁に求められる最も大事な機能の一つは、風雨・降雪・日射などの屋外からの自然の脅威に対し、建築の躯体構造と内部空間を保護することにあります。保護された内部空間は住民の生活と財産を守ります。屋根と外壁によって健全性を保たれた躯体構造は地震に対しても内部空間を保護します。

また火災延焼に対しても屋根と外壁は住民の避難時間を一時的に確保します。つまり「屋根と外壁」とは「住民の命と生活と財産を保護」するための「建築の外皮」と捉えることができます。

この建築の外皮(屋根と外壁)は風雨・降雪・日射などの屋外からの自然の脅威に常に晒され続ける過酷な役割を担うために、経年劣化が避けられません。経年劣化に伴う機能の低下を避けるためにも「改修」によって新築時またはそれ以上の機能レベルに回復させることは極めて重要となります。また時代の変化によって要求性能あるいは許容できる性能そのものが上がってしまうこと(例えば断熱性能の向上など)もあることでしょう。

かつての高度経済成長時代にあっては、古い建物は解体し新しい建材で新築するいわゆるスクラップアンドビルドが経済全体を底上げしていた側面も多々ありましたが、今後の成熟した社会においては既存のストックを活かしつつ「改修」によって建物を長持ちさせる技術にも大きな期待が寄せられています。

本書ではこのような建物を長持ちさせる技術としての屋根と外壁の「改修」にスポットを当て、その現状をまとめました。また、工法の事例については特に図版を多用し、できるだけ見やすくわかりやすいように配慮しています。

第1章 改修の考え方

屋根や外壁も一定の供用期間が経過すると、これらに求められる機能の回復、新たな機能の付加、意匠性(美観)の向上等を目的とした改修工事が行われます。屋根と外壁に求められる機能として下地や躯体に対する保護が第一義的であることを考えれば、特に経年劣化による機能の低下は避けるべきであり、改修によって新築時又はそれ以上の機能レベルに回復させることは極めて重要です。

改修工事では、工事に先立ち既存の仕上げ材や下地の状態を適切に把握することが新築工事と大きく異なる点であり、その状態(劣化の程度等)に応じた改修工法を選択する必要があります。本書では、図1.1.1の示す改修の段階を対象にして、日本建築学会「建築物の改修の考え方・同解説」、日本金属屋根協会「屋根改修工事の手引き(旧版)」等に準拠した考え方を系統的に整理するとともに、鋼板製屋根・外壁に採用されている一般的な改修工法を分類します。

上記の文献によれば、一般に改修の定義は表1.1.1に示すとおりであり、供用期間中の「劣化」及び「陳腐化」への対応として位置づけられています。つまり、維持保全と改良保全の両者を含む行為と言えます。また改修工事に先立ち、改修で目標とする性能水準、調査・診断の方法、改修工法の選択等について、工事発注者と設計者、総合工事業者又は専門工事業者との間で入念に打ち合わせをすることも極めて重要となります。

表1.1.1 用語の意味

用語 意味
改修 劣化又は陳腐化した建築物、又はその部分の性能や機能を初期の水準もしくはそれ以上の要求される水準にまで改善すること。
改修設計 建築物の改修部分の設計を行うこと。

第2章 劣化と改修の事例

金属製外装材の様々な劣化の事例と外装材の様々な改修の事例にふれています。

写真2.1.5 瓦棒:屋根面と谷どいの全面発錆(1961年築とされる建物、海岸より約60kmの内陸地域、調査は2014年)

写真(a) ねじのゆるみ

写真(a) 改修前

写真(b) ねじのゆるみ

写真(b) 改修後

写真2.2.2 波形スレート屋根のカバー改修事例

第3章 調査・診断

工事の実施に先立ち、改修計画の作成や改修工法の選択等を適切に行うため、外装材等の劣化の程度その他の状況を調査・診断する必要があります。逆に調査内容が不充分であると、屋根や外壁の完成度や施工性等に大きな影響を与えることになります。一般に外装材等の調査は、事前診断時、設計・見積り時、施工前の3段階に分けられます。改修工事に係る調査は、設計者等が専門知識を有する業者に依頼することが多いですが、屋根・外壁改修の場合には、製品供給業者や専門工事業者が担当するのが一般的です。各段階での調査方法の概要をまとめて解説しています。

写真3.1.1 粘土瓦・住宅屋根用化粧スレートの劣化や不具合の例
(画像提供 (一社)全日本瓦工事業連盟)

(a)ほぼ全面的な発錆

(b)部分的な発錆

(c)瓦棒ぶきの軒先と唐草の一部の劣化状況

写真3.1.2 金属屋根の劣化の例

第4章 金属屋根によるカバー工法

ここでは改修工法の主流である屋根のカバー工法について、工法の概要・施工の流れを解説しています。

既存屋根 改修工法 工法概要パース図 改修工法構成 固定方法 ・ 既存下地 工法のポイント
事前調査・工法検討 下地処理 新設屋根・下地の施工
4.6
立平ぶき屋根の改修
(1) 改修用折板屋根による
カバー工法
(直接固定工法)
・改修用折板屋根
・改修用金具
(タイトフレーム)
・下ぶき材
直接固定工法

改修用金具を母屋ねじ留め
・既存母屋の状況確認
・既存瓦棒の働き幅と新設屋根の適合
→働き幅に合った屋根材の選定
→働き幅可変型の成形機
・室内側への切粉対策
・発錆、堆積物の処理
・施工に支障のある部材、下地の撤去
・新設改修用折板を改修用金具にかん合
・改修用金具を母屋にねじ留め
・母屋位置の確認、墨出し
・改修用金具の取り付け精度
(通り、不陸)
4.7
横ぶき屋根の改修
(1) 横ぶき屋根による
カバー工法
(直接固定工法)
・横ぶき屋根
・下ぶき材
・鋼板製垂木
(ハット形鋼)
直接固定工法

鋼板製垂木(ハット形鋼)を母屋ねじ留め
・既存母屋の状況確認
・既存屋根の腐食状況
・室内側への切粉対策
・発錆、堆積物の処理
・施工に支障のある部材、下地の撤去
・新設横ぶき屋根を垂木にねじ留め
・下地のハット形鋼を母屋にねじ留めするため、既存下地 (母屋)の位置確認をし、墨出しを行う
・新設ハット形鋼取り付け時に既存の横ぶき材がつぶれ不陸が大きくなる場合は、必要に応じてスペーサーを設置する
4.8
重ね形折板の改修
(1) 重ね形折板屋根による
カバー工法
・重ね形折板
・改修用金具
【直接固定工法】
改修用金具を既存タイトフレームにねじ留め
【間接固定工法】
改修用金具を既存剣先ボルトに取付
【共通】
・既存タイトフレームの状態確認・既存屋根の腐食状況
【間接固定工法】

・剣先ボルトの状況確認 (剣先長さ、径、ねじ山の消耗、さび等)
【共通】
・発錆、堆積物の処理
・施工に支障のある部材、下地の撤去

【間接固定工法】
・剣先のさび除去
【共通】
・新設重ね形折板を改修用金具にボルト留め
【直接固定工法】
・改修用金具を既存タイトフレームにねじ留め
【間接固定工法】
・剣先ボルトに改修用金具を取り付け
・座金下に改修用金具を挿入
(2) かん合形/はぜ締め形折板
屋根によるカバー工法1
(直接固定工法)
・はぜ締め形折板
・改修用金具
直接固定工法

改修用金具をタイトフレームにねじ留め
・既存タイトフレームの状況確認
(板厚、劣化状態、ピッチ、ドリルねじの選定[耐力])
・既存屋根の腐食状況
・既存屋根と新設屋根の適合(働き、梁間)
・室内側への切粉対策
・発錆、堆積物の処理
・施工に支障のある部材、下地の撤去
・新設はぜ締め形折板を改修用金具に留め付け
・改修用金具を既存タイトフレームにねじ留め
(3) かん合形/はぜ締め形折板
屋根によるカバー工法2
(間接固定工法)
・かん合形折板
・改修用金具
間接固定工法

改修用金具を既存剣先ボルトに取り付け
・剣先ボルトの状況確認
(剣先長さ、径、ねじ山の消耗、さび等)
・既存屋根の腐食状況
・既存屋根と新設屋根の適合(働き、梁間)
・室内側への切粉対策
・発錆、堆積物の処理
・施工に支障のある部材、下地の撤去
・剣先のさび除去
・新設かん合形折板を改修用金具に留め付け
・剣先ボルトに改修用金具を取り付け

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第5章 設計・契約

元請として改修工事を行なう場合に営業から、設計・契約に至る分野です。改修工事は下請の場合であっても、計画 段階から相談等を受けることが多いので、参考となる点を解説しています。

表5.3.1 現場説明時に実施すべき内容

総合工事業者 専門工事業者
・見積条件の明確化 注1)
・見積費目の提示 注2)
・工事に精通した社員の出席
・工事監督担当者の出席 注3)
・図面から読み取れない特殊事項の説明
・見積条件の確認
・見積費目の確認
・業務に精通した社員の出席
・受理した図面、仕様書等による質疑事項の整理
・図面と現地との不具合が生じた場合の総合工事業者との
 詳細図面等による確認

注1) 以下に掲げる見積条件を書面により提示し、必要に応じて口頭で説明する。以下の項目のほか、施工計画書の提示等を考慮することが望ましい。

見積条件 内容
1.工事場所
2.工期
3.制約条件
4.特記仕様
5.支給材料
6.無償貸与物
7.製品メーカーの指定
8.見積書の提出期限
立地条件等
全体工程及び当該工事工程等
作業時間帯制限等
工法指定等
支給材料の有無等
仮設材等の貸与等
使用材料のメーカー指定の有無

注2) 見積金額の算出根拠を明確にし、適正な金額折衝を可能とするため、使用する見積費目を書面
  にて提示するとともに、各費目の具体的内容を双方で確認する。必要に応じて口頭で説明する。
注3) 必要に応じて、設計者の出席にも配慮する。

表5.3.2  図渡し時に実施すべき内容

総合工事業者 専門工事業者
・見積条件の明確化 注1)
・見積費目の提示 注2)
・工事に精通した社員の出席
・工事監督担当者の出席 注3)
・図面から読み取れない特殊事項の説明
・見積作業に必要な図面、仕様書の確認
・受領した図面、仕様書、工程表等による見積範囲の確認

表5.3.3  質疑応答時に実施すべき内容

総合工事業者 専門工事業者
・担当者の明示
・職務上権限を有するものの対応
・記録( 書面) の保存
・担当者の明示
・質問内容の明確化
・記録( 書面) の保存

表5.3.4  見積書提出時に実施すべき内容

総合工事業者 専門工事業者
・依頼内容、現場説明時の提示条件等が満たされているかの
 確認
・安全面が充分配慮されているかの確認
・欠落部分の明確な指示
・依頼内容、現場説明時の提示条件等が満たされているかの
 確認
・安全面が充分配慮されているかの確認
・欠落部分についての迅速な対応

第6章 工事の計画

施工計画は最終的な施工仕様を決定する段階であり、鋼板製屋根・外壁の強度についても最終確認を行うタイミングです。各種確認項目「(1) 建築物の規模・概数」「(2)工事数量」「(3)工法と仕様(荷重)」について解説しています。

第7章 工事体制の整備

近年の建築基準法改正により、住宅改修および屋根改修工事において、元請け事業者に求められる責任と対応範囲が大きく変化しています。法令遵守と技術的な対応力が重要な点などを解説しています。
また、屋根工事を実施するのに必要な建設業許可についても解説しています。

第8章 工事環境の整備

屋根改修工事における工事環境の整備は、施工の安全性、作業効率、品質の確保を図る上で、極めて重要な要素です。工事現場における環境整備に関する基本的な考え方および留意点について記載しています。

第9章 工事の準備と進行

工事の進行に伴う確認項目を掲載しています。

図9.1.1  改修工事の標準工程の例

第10章 工事の完成

工事完成時の検査項目や引渡しに必要な手続きや提出書類について解説し、維持管理依頼書の例示も掲載しています。

参考資料1 既存の屋根ふき材を対象にした耐風診断・補強技術評価に関する研究の概要

カバー工法による折板やねの接合部を対象にした耐力補強効果の検討を紹介しています。

図5 試験体の設置状況とカバー工法による接合部の状況

図6 吊子と固定金具の概要(単位mm)

図7 はぜ締め作業の状況

表1 折板材と吊子の仕様(単位mm)

表2 折板材と吊子の仕様(単位mm)

参考資料2 屋根ふき材の改修における耐風補強

折板接合部試験報告書を記載しています。

解図4.2.12  吊子と断熱金具の形状

解表4.2.6  接合部試験体の耐力試験結果

解図4.2.13  接合部試験体の外観

参考資料3 石綿障害予防規則

石綿(アスベスト)は、天然の繊維状鉱物で、「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。石綿(アスベスト)の繊維は、肺線維症(じん肺)、中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることも知られています。現在では、石綿(アスベスト)を含む製品の輸入・製造・使用等は禁止されていますが、過去には建材などに使用されてきたことから、建築物やその他の工作物等に石綿(アスベスト)を含む建材が使用されている場合があります。

建築物の解体・改修・リフォームなどの工事の際に工事に従事する方が石綿を吸い込んだり、大気中に石綿が飛散するおそれがあるため、石綿による健康障害を防ぐため、適切な石綿対策事項を記載しています。

図1 改正後の規制(改正石綿障害予防規則)

参考資料4 建築物等の解体等における石綿の飛散防止対策

日本金属屋根協会 技術委員会にて、環境省作成の『防止対策マニュアル』に掲載された「元表」に対し、屋根工事業 の主な対象となる「石綿含有成形板等(レベル3)」に該当する箇所を青枠にて囲みました。石綿含有成形板等の種類は「けい酸カルシウム板第1種」と「それ以外(主にスレート波板)」の2つに大別され、またそれらの除去作業において切断を伴うか否かによっても分けられ、結果的にそれぞれ3つの手順があります。それらの3つの手順を「手順①」「手順②」「手順③」として「元表」に追記しました。

また、手順①~③のそれぞれの違いのポイント部分のみを下表にまとめましたので、参考としてください。

参考資料5 国住指第355号/国住指第356号

国土交通省住宅局建築指導課長より通知の(国住指第355号/国住指第356号)より、屋根及び外壁の改修に関する建築基準法上の取扱いについて記載しています。

参考資料6 工事関係書類一覧表

元請として改修工事を行なう場合は、工事着手から完成・引渡しまでに、段階ごとに、必要書類を掲載しました。

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