No.97
(1/1) ルーフネット 森田喜晴
京王電鉄高尾山口駅の改札を出れば、そこはもう参道の始まりである。舗装された道をゆっくり歩くこと70分。 息が切れかけたころ四天王を安置した総檜造りの山門が 迎えてくれる。
高尾山は東京中心部から西へ約50キロのところに位置し、江戸時代から信仰の霊山として、また都民、近県の行楽地として広く知られている。標高600メートルの山中には山岳信仰の飯縄大権現を祀る薬王院の諸堂が点在し、紅葉の山、杉の山として親しまれ、鳥や草木の種類が豊富で、薬王院と参道のスギ並木は八王子八十八景に選ばれている。
東京都八王子市の高尾山薬王院は、奈良時代の高僧で ある行基が744年(天平16年)に開山した。正式には高尾山薬王院有喜寺という。1376年(永和元年)、京都醍醐山の高僧・俊源大徳が入山し、本尊である「飯縄(いづな)大権現」を祀り、中興した。山門、仁王門、本堂、本社、大師堂、不動堂、奥之院、大本坊などからなり、関東屈指の霊山として多くの信奉者や観光客が参り賑わう。山頂への手段としては、徒歩かケーブルカー、リフトがあり、登山は容易で年間の登山者は日本一という。
薬王院の名は創建当初、薬師如来を本尊とした事に由来し、現在は真言宗智山派の大本山として「成田山新勝寺」「川崎大師平間寺」と並ぶ「高尾山薬王院」が三大本山とされる。
修験道のシンボルである天狗は飯縄大権現の眷属(けんぞく)随身として、除災開運、災厄消除、招福万来など、衆生救済の利益を施す。古来より神通力をもつ多くの天狗伝説や天狗信仰によって、神格化されていて、高尾山は、飯縄信仰と共に天狗信仰の霊山としても知られている。
本堂の屋根
大師堂
本堂大棟の鳥衾
本社軒裏飾り
本社拝殿妻飾り
仁王門
鐘楼
境内配置図
薬王院の中心となる社殿は「本社(権現堂)」と、飯縄権現を祀る社殿(神社)である。現在の社殿は1729年(享保14年)に本殿が建立され、1753年(宝暦3年)に幣殿と拝殿が建立された。その後1805年(文化2年)、1965年(昭和40年)、1998年(平成10年)に大改修を行なっている。江戸時代後期の代表的な神社建築として1952年(昭和27年)に東京都指定有形文化財に指定。入母屋造の本殿と拝殿を幣殿で繋いだ権現造で、社殿全体に華麗で極彩色の装飾がなされていることが特徴である。寺院の中にある神社という形態は神仏分離以前の神社の姿の一つの典型例とされる。本尊の秘仏飯縄大権現立像は異形の仏として有名。