銅屋根クロニクル

No.92

日本初甘柿発見の寺は関東の高野山
王禅寺(神奈川県)

(1/1) ルーフネット 森田喜晴

星宿山蓮華蔵院王禅寺(おうぜんじ)は、神奈川県川崎市麻生区にある真言宗豊山派の寺院で、「王禅寺」はこの寺一帯の地名にもなっている。

延喜21年(921)に高野山三世無空上人が開山したとも伝えられ、かつては禅宗・律宗・真言宗の三宗を兼学したという。新田義貞の鎌倉攻めに際して兵火に罹災したものの再興、室町時代には真言密教の道場となり、関東の高野山とも称せられた。寛永19年(1642)には江戸幕府より寺領30石の御朱印状を受領、境内に5塔頭、近郷に数多くの末寺を擁する寺院だった。旧小机領三十三所子歳観音霊場22番。徳川幕府の歴代の将軍(徳川家康を始めとし、後の13人の将軍)の位牌を奉り、将軍家より葵の御紋の使用を与えられた。寺紋は三つ葉葵。

日本最古の甘柿の品種と言われている禅寺丸が発見された寺として有名で、境内には原木が残っている

周囲には大きな樹木が茂り、この地を愛した北原白秋の歌碑がある。本堂の前庭には、樹齢450年と伝えられる禅寺丸柿の原木がある。これは、「柿生」という地名・駅名の由来となったといわれている。平成19年(2007年)に国指定の登録記念物になり、文化庁から贈られた登録証銘板が埋め込まれた記念碑が柿生禅寺丸柿保存会により設置された。また、川崎市選定「まちの樹50選」、「ふるさと麻生八景」にも選ばれている。

創建の正確な年代は不明であるが慶安3年(1650年)成立の縁起(『聖観世音菩薩略縁起』)によると、天平宝字元年(757年)、観音菩薩が孝謙天皇の夢枕に現れ「武蔵国の光ヶ谷戸という所に居る」と言われ、探索を命じられた結果、発見された。孝謙天皇の勅命で武蔵国都筑郡二本松で発見(光ヶ谷など異説あり)された一寸八分の聖観音(しょうかんのん)である金の像を祀り堂宇を創建したという。

観音堂(旧本堂)

観音堂(旧本堂)

山門(仁王門)

山門(仁王門)

観音堂から仁王門を振り返る

観音堂から仁王門を振り返る

観音堂から本堂へ

観音堂から本堂へ

薬師堂

薬師堂

紅葉と落ち葉に包まれた参道を進むと階段の上の山門の格子越し真っ赤な仁王様が睨んでいる。「星宿山 王禅寺」の碑の先に旧本堂である観音堂の屋根が輝る。

山門の格子越し真っ赤な仁王様が睨んでいる

王禅寺や、裏山、境内のふるさと公園は秋になると美しい紅葉に染まり、観音堂や観音堂から望む本堂は、絶好の撮影ポットとなる。本尊聖観音菩薩像を祀る観音堂は旧本堂で、茅葺き屋根の雨漏りがひどく、20年前、銅板で葺き替えた。

「聖観音菩薩像」の作者は不明だが、前々回2008年の開帳の際、1608年にできたものだと判明。以来、寺では毎月17日を「観音様の日」とし観音堂を開扉するが、堂内で本尊を拝めるのは子年の開帳期間だけである。

元は茅葺き屋根の講堂であったが、20年前、真言宗の寺としての本尊大日如来を祀る新本殿として落慶した。右の木が禅寺丸柿の原木。

アクセス:小田急電鉄「柿生駅」または「新百合ヶ丘」駅よりバス、「王禅寺東3丁目」下車、徒歩3分。

ページトップへ戻る