銅屋根クロニクル

No.66

「みなとオアシス」の屋根は玄昌石と銅板葺き
新潟市歴史博物館(新潟県)

(1/1) ルーフネット 森田喜晴

長岡市にある新潟県立歴史博物館と間違えやすい名前だが、こちらは新潟駅から車で10 分ほど。みなとオアシスエリアの広い庭に囲まれて建っている。新潟市歴史博物館本館はSRC3 階建て、延床面積約5500㎡。外装は木造モルタル仕上げの二代目市庁舎にならって、現代工法でのモルタル仕上げを施した。基壇部は中国花崗岩、屋根は玄昌石に銅板の段葺きえで施工され、風格ある仕上げになっている。

このエリアの歴史を博物館の資料で見てみると、まず現在の歴史博物館の前身である「新潟市郷土資料館」が1972年(昭和47年)4月に開館。10年後の1982年(昭和57年)に、本館に隣接して旧新潟税関石庫(いしぐら)が復元された。さらに横を通る市道には、かつて市の中心部に巡らされていた堀も再現された。しかし当時の本館は重要文化財に指定された(1969年)旧新潟税関庁舎を転用したものだったため、展示スペースは手狭で、公開できる資料数が少ないため、博物館としての機能を果たしきれなかった。さらには建造物を保護する意味でも施設を拡充する必要性が生じた。

新潟市歴史博物館

そこで新築・改装工事が行われた後、2004年(平成16年)3月27日、新たに建設された博物館本館と、移設・復原された旧第四銀行住吉町支店の公開を開始し、現名称に改称した。信濃川・新潟西港に面するロケーションから、みなと(港)とユートピア(理想郷)をつないだ造語である「みなとぴあ」の愛称が、一般公募によって命名された。新潟西港一帯はみなとオアシスとして登録していて、博物館本館はみなとオアシス新潟の代表施設となっている。

博物館本館はみなとオアシス新潟の代表施設となっている。

正面に工事中の旧新潟税関庁舎

正面に工事中の旧新潟税関庁舎

正面に朱鷺メッセ

正面に朱鷺メッセ

旧第四銀行住吉町支店

旧第四銀行住吉町支店

博物館敷地内の各所には堀を模した水路が設けられ、畔にはヤナギが植栽されている。これはかつての新潟市中心部の景観をイメージしたもので、特に博物館本館脇の水路は、市庁舎が所在した西堀を模したものである。
 川をはさんでそびえるのが新潟県で最も高い建物である朱鷺メッセ・万代島ビル。140.5m。組み写真の左上はこの展望台から撮影したもの。

旧第四銀行住吉町支店

掘をはさんで正面に見えるのが旧第四銀行住吉町支店。昭和時代初期に全国で見られた新古典主義様式の銀行建築。無料で見学できる。

設計者は新潟市の長谷川龍雄氏で、施工は地元の建設会社の武田組。外壁には花崗岩を積み、正面入 口には4本のイオニア式の列柱が並ぶ。この列柱とその奥に見えるアーチ形の窓が、銀行だった建物の荘厳さを強調している1927年(昭和2年)10月に竣工した第四銀行住吉町支店が撤去されることになったものの、「昭和初期の貴重な建造物を残してほしい」と保存を求める市民らの強

い要望で、みなとぴあ敷地内への移転・復原が実現した。移築が難しい鉄筋コンクリートの骨格部分は新たに作り直されたが、花崗岩製の外壁や列柱、ロビー部の大理石製のカウンターなどが建設当初の姿に復原された。 2005年(平成17年)、国の登録有形文化財に登録。

旧新潟税関庁舎

安政5(1858)年の修好通商条約により、神奈川、函館、長崎、兵庫と並んで開港場の一つに選ばれた新潟は、明治元年に開港した。翌年の明治2年に、関税業務を行う役所として、後に新潟税関となる新潟運上所がつくられた。

旧新潟税関庁舎は、港町新潟を象徴する建物であり、開港当時の姿を今に伝えている。

開港五港の中で唯一現存する、開港当時の運上所(税関)の遺構。いわゆる擬洋風建築の一例で、赤瓦葺きの屋根とナマコ壁の外観にアーチ状の玄関口と塔屋などの洋風の意匠を取り入れている。塔屋の屋根が銅版葺きなのだが、撮影した日は(2019年7月1日)は改修工事中であった。

アクセス: 〒951-8013 新潟県新潟市中央区柳島町2-10
     TEL.025-225-6111 Mail:museum@nchm.jp
     新潟駅万代口バスターミナルより路線バスを乗り継ぎ15 分。
     「歴史博物館前」下車。または「湊町通二ノ町」下車。
     徒歩8 分。

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