銅屋根クロニクル

No.21

「赤れんが庁舎」・北海道庁旧本庁舎(北海道)

(1/1) ルーフネット 森田喜晴

北海道庁旧本庁舎。明治21年竣工。重要文化財。設計は北海道庁の主任技師平井晴二郎。明治42年に火災で内部は全焼、昭和42年に創建時の姿に復元され「道庁赤レンガ庁舎」、「赤れんが」と呼ばれ親しまれている。

館内は北海道開拓関係資料を展示・保存する北海道立文書館等として一般に公開され、昭和58年の改修工事で使用された屋根の銅板とスレートも展示されている。一部は隣接する現道庁の会議室として現在でも使用されている。故にこの建物は「現役最古の道府県庁舎」ということができる。北海道にとっても象徴的存在である。

北海道工業大学 乾研究室による50分の1模型

▲北海道工業大学 乾研究室による50分の1模型。

▲背面もデザインに手抜きはない。

▲背面もデザインに手抜きはない。

明治19年(1886)北海道庁を設置した政府は庁舎を旧開拓使札幌本庁舎構内(現在地)に建築することを決め、同年着工した。21年の竣工当時はネオアメリカンバロック様式のれんが造の本館と、木造の附属舎からなっていた。木造の附属舎はすでにない。

庁舎の中に「赤レンガ庁舎炎上」という銘板がある。曰く「明治42年(1909)1月11日午後6時過ぎ、地階印刷所より出火、内部及び屋根を消失した。れんがの躯体はほとんどが無傷で残ったので翌43年、修理工事に着手し、明治45年(1912)6月完成した。以来、北海道庁本庁舎として、昭和43年(1968)2月まで使用された」。

▲中央にそびえる八角形のドーム

▲中央にそびえる八角形のドーム

建物の中央にそびえる八角形のドームは、赤れんが庁舎の目印のようなものだが、実はこの塔はオアメリカンバロック様式というフレームから大きく外れるものであるという。

鉄の化粧手すりの錆が一文字葺きの銅板にくっきりと跡をつけている。鉄部の定期的な塗装は欠かせない。

▲北海道旧本庁舎

▲北海道旧本庁舎

ネオバロック様式の窓上部アーチやドーマー窓

▲ネオバロック様式の窓上部アーチやドーマー窓

煉瓦、スレート、銅板といえばネオバロック様式建築の屋根の3点セット。窓上部のアーチやドーマー窓に様式の特徴が表れている。フランス積み250万個のレンガは、地元、白石村と豊平村で焼かれ、天然スレートは宮城県雄勝町(現在の石巻市)の天然スレートを取り寄せて葺かれた。

「煉瓦とスレートと銅板の絶妙なバランス」と言いたいところなのだが、銅板の幅広い直線が目立つ。特に気になるのは軒先の蟻掛け(ありかけ)の立てはぜ葺きだろう。もともとは蛇腹の木下地を銅板で繊細に包んでいたはずだ。しかし雪国の屋根は過酷な環境にあるため、積もった雪や氷に引っ張られ、複雑な形状では破断してしまう。

天然スレートは現・石巻市産

▲天然スレートは現・石巻市産

煉瓦とスレートと銅板の絶妙なバランス?

▲煉瓦とスレートと銅板の絶妙なバランス?

隅棟も極めてシンプルなライン。

▲隅棟も極めてシンプルなライン。

スレート取り合い

▲スレート取り合い

スレートの取り合いや谷の部分は、デザインより機能優先になるのはやむを得ないところだ。

軒先部

▲軒先部

「雪でも故障しない、長期間ノーメンテで持たせる」という北国の要望に応えるのは、大変なことだ。しかしそれに応えてきたからこそ、「板金王国北海道」が成立したわけだ。

ドーマー窓部

▲ドーマー窓部

とは言っても、軒先や、谷や棟のラインにもう少しだけ意匠上の工夫があれば、建物はよりチャーミングになったであろうと思える。

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