No.19
(1/1) ルーフネット 森田喜晴
拝殿。銅板一文字葺きの屋根
熱田神宮の祭神は「熱田の大神」。熱田の大神とは、三種の神器の1つ、草薙剣(くさなぎのつるぎ)である。剣は日本武尊(やまとたけるのみこと)の命を救うまでは「天叢雲剣(あめのむらくもつるぎ)」とよばれた。ただし、神剣は壇ノ浦の戦いで遺失したとも熱田神宮にずっと祀られたままともいわれている。創建は119年(景行天皇43年)と伝えられており、2013年(平成25年)に「創祀千九百年大祭」が行われた。
本殿は伊勢神宮と同じ神明造
鬱蒼と茂る楠の大木の隙間から拝む本殿
現在の建物は伊勢神宮と同じ神明造であるが、 1893年(明治26年)までは流造の一種で「尾張造」と呼ばれる独特の建築様式であった。その様式は摂社の氷上姉子神社に残っている。
拝殿の通し千木
拝殿の軒先
本殿、拝殿の屋根は銅板の一文字葺き。熱田神宮の屋根の特徴は、穏やかな威厳を保ちつつ、ふくよかなボリューム感、ゆったり感があることだろう。ここでは茅葺きの柔らかいおおらかなイメージが銅板でみごとに再現されている。茅葺きを感じさせるのは、熱田神宮がこだわった「伊勢神宮と同格」「神明造りでの大改造」にあるのだろう。伊勢神宮の茅葺き屋根が、茅という素材を用いながら、削ぎ落とされた硬質なものを感じさせるのに対して、熱田の屋根は、金属を使いながら、ふっくらとした屋根を実現している。
神楽殿
デザイン力と板金屋根の高い技能が合体して近代的建築の中に茅葺きの柔らかい雰囲気が漂う。
斎館の屋根では、まず軒先が描く曲線に目が行く。だがそれだけではない。
上段の一文字葺きと下段の大和葺きのコンビネーションで裳腰屋根を銅板で再現する。事務棟も、拝殿、神楽殿の存在感に負けてはいない。