銅屋根クロニクル

No.12

三博の屋根を彩る緑の縁(上)

(1/1) ルーフネット 森田喜晴

「三博」といってもクリスマスの降誕劇で子供たちが扮する
東方の「三博士」ではありません。

三博の屋根を彩る緑の縁(上)

池に映っても美しい東京国立博館表慶館の屋根

トーハク(東京国立博物館)、キョーハク(京都国立博物館)、ナラハク(奈良国立博物館)の「サンハク」のことで、この三博の建物を設計したのがコンドルに学んだ工部大学校建築学科一期生にして宮内省内匠寮の片山東熊(かたやま とうくま)です。
ただし東博に関しては片山が設計したのはドームのある表慶館で、本館は渡辺仁の設計です。

京都国立博物館
京都を代表する明治洋風建築である京都帝室博物館(京博の前称)は、奈良博完成の翌年にあたる明治28年に竣工した。この年は、平安遷都1,100年を記念して平安神宮が創建され、内国勧業博覧会が開催された年である。赤レンガと御影石の壁に天然スレート葺きの屋根。その濃いグレーの屋根を銅板で施工された隅棟やベランダの笠木・軒先の緑青が引き締めている。

ドーマーの背屋根や隅棟の銅板と天然スレート、片山こだわりの鉄の飾柵。薄曇りで見えにくいが、京都東山のなだらかな稜線が銅板のドーマー背屋根ラインに連なる(右下)。

本館東側の事務棟の屋根。桟瓦葺きだが大棟に近い部分は質素な瓦棒葺きの銅板だ。頂点の棟飾りもデザインは本館と合わせているものの、遥かにシンプルである。

現在の東京国立博物館本館。1937年竣工、渡辺仁設計による東洋色ムンムンの建築、本瓦棒葺きの屋根に棟おさえも鬼も瓦だ。銅の使用は樋だけである。

東博の建築で片山が設計したのはこの表慶館。1908年竣工。大正天皇の成婚記念として計画されたためこの名がついた。明治末期を代表する洋風建築として重文指定。クスノキの葉の額縁を通して見上げると、青空を背景にしたドームの緑青がまぶしい。

表慶館側面。銅板葺き屋根の落し込みの額縁(くぼんだ部分)が壁面のデザインに統一感を与えている。

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