銅屋根クロニクル

No.3

築地本願寺(東京)

(1/1) ルーフネット 森田喜晴

築地本願寺(東京)

設計:伊東忠太  施工:松井組  竣工:昭和9年 場所:東京都中央区築地3-15-1
東京都選定歴史的建造物。
本堂と石塀が国の登録有形文化財に登録されている。

「銅屋根クロニクル」第3回目は、東京都の築地本願寺です。
「建築史学」の開拓者・伊東忠太が仏教研究の結果行き着いた様式で、円柱の足元には古代中国の伝説上の動物が踏ん張っているほか、建物のあちこちに謎の生き物の姿が見られる。

最大の特徴は急勾配のカマボコ屋根

築地本願寺は元和3年(1617)西本願寺派の関東における根本道場として浅草に創建されたが、明暦3年(1657)の振り袖火事により焼失、その後海辺を埋め立て本堂が建立されたが、大正12年(1923)関東大震災で焼失した。

現在の本堂は古代インド様式といわれ、当時の浄土真宗本願寺派法主・大谷光瑞と親交のあった建築家・伊東忠太(東京大学教授)の設計。

浄土真宗本願寺派の新体制移行(2012年4月1日付)に伴って、正式名が「本願寺築地別院」から「築地本願寺」になった。

本堂の円屋根の棟に5本の尖塔が立つ。
創建時の屋根施工は小野工業所先々代社長で創業者の小野留吉さん。
使用されていたのは0.6ミリの銅板、最大の特徴である急勾配のカマボコ屋根。素人目には恐ろしい勾配だが、屋根職人にとっては、これは特に問題にならない。
屋根工事は昭和7年に始まったが、昭和8年から24年までは銅板統制が続き、工事は困難な時代だった。

設計者は樋のデザインにもこだわった。鮟鱇(あんこう)や、鋳物のデンデン(竪樋固定金物)を見るだけでも楽しめる。
もちろん樋も小野留吉さんの仕事だ。昭和38年の屋根改修工事の指揮をとったのが中原征四郎さん(現在同社顧問)。壊れた部分は修繕し、一部は新たに原型通り作り直した。今でも、しばしば職人に「参考にしろ」とこの樋を見に行かせるそうだ。

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